リーダーという立場で仕事をしている人がいることは、時代が変わってもまったく変わっていませんが、私たちを取り巻く環境はどんどん変わっていきます。
リーダー・マネージャーとして今も最前線で活動している筆者が、今の時代のリーダーに求められている10のスキルをご紹介します。
目次
今の時代のリーダーに必要な10スキル
今の時代のリーダーに求められているスキルは、以下の10種類です。
- リーダーシップ
- 業務遂行力
- 情報収集力
- 課題解決力
- 先見力
- 決断力
- 数値力
- コミュニケーション力
- ポジティブシンキング
- 調整力
ざっと見ると、「特に目新しいものはない」ように感じます。ですが、スキルの名前自体は変わっていなくとも、求められる中身に変化が起こっています。
1つずつご紹介していきます。
リーダーシップ
リーダーシップとは、「他者を目標や目的に向かわせることのできる影響力」です。
いつの時代も、リーダーは他者を率いて目標を達成する必要があるため、リーダーシップ自体は常に必要なスキルといえるでしょう。
今の時代のリーダーシップとして変わってきていることは、中身が単純ではなくなってきたことと、他者そのものが変わってきていることです。
まず、従前の会社組織は社歴を重ねるにつれてポジションが上がっていくため、リーダーという立場になった場合に、周囲は自分より年下であることが多くありました。また、年功序列の意識によって、「先輩の命令は絶対である」という空気をだれも信じて疑いませんでした。
そのため、以前は特別な工夫を必要とせず、「やれ」の一言で他者を従わせることができていました。結果的に他者を目標に向かわせることができていたため、結果論として「当時の」リーダーシップとしては成立していたのです。
ですが、今の時代は年功序列よりも成果主義へと移り変わり、「年齢や社歴が上だから」という理由で他者を従わせることが困難になってきました。また、フォロワーたちはほかの組織の情報を容易に得られ、「自分たちのリーダーは”いいリーダー”なのか?」という比較もたやすくなっています。
つまり、時代が変わったことによってポジションで有無を言わせない従来のリーダーシップではなく、人柄として「この人についていきたい」とフォロワーたちに思わせるようなリーダーシップが必要とされているのです。
それも、フォロワーに媚びるのではなく、フォロワーたちに自発的にリーダーの背中を追わせる影響力です。
時代の変遷によってリーダーシップ習得の難易度は向上していますが、だからこそできる人は目立ち、さらに素敵な経験を積めるということでもあります。
諦めることなく、自分を磨いていきたいですね。
業務遂行力
業務遂行力、つまり「今の部署のオペレーショナルな業務を行う力」は、リーダーにとって必要なスキルのひとつです。
他者を巻き込んでの目標達成が必要なリーダーにとって、フォロワーが業務を遂行するために彼ら彼女らを
指導・育成
する必要があるからです。
リーダーに必要な業務遂行力は、
「自分が自分なりのやり方でできればOK」
だったものから、
「業務をこなせることはもちろん、他者に理路整然と説明できるよう自分の中で噛み砕いて理解できるまで知る」
というレベルまで、時代の変化とともに上がってきています。
というのも、ひと昔前は
仕事は教えられるのを待つんじゃなく、見て盗め!
みたいな風潮があったため、他者に懇切丁寧に教える必要はありませんでした。そのため、説明できるレベルではなく業務ができるレベルまであればよかったのです。
しかし、今はそうはいきません。「仕事の仕方はわからないから教わるのが当たり前」という時代に変わっているため、「見て盗め」ではフォロワーたちを育てることなどできません。そのため、リーダーは「他者が業務ができるようになるまで説明できる」くらい習熟する必要があるのです。
リーダーとして自分が行っている業務は、改めて他者に説明できるレベルまで整理しておくことが、今のリーダーには求められています。
情報収集力
時代に取り残されることなく情報収集を行い、継続的なインプットを行う力もリーダーには必要です。
刻一刻と変化するこの時代に、情報や知識をアップデートできないことは、すなわち衰退を意味するからです。
仮に情報収集をし続けなければ、自分の少ない引き出しのみで組織を率いて課題解決に向かうこととなります。
それはつまり、たくさんある選択肢から最善を選択するのではなく、少ない選択肢の中から最善を選択することになるので、効果的な選択肢を導ける可能性がグッと低くなることを意味します。
たかだかひとりの経験や知識などしれています。
インターネットのおかげで簡単に情報を取れるのに、それをしないのはもったいないです。
かなり前ですが、昭和の時代は「やればやるだけ成果が出る」状態だったため、正解を求めずとも時間をかけてがむしゃらに仕事をすることでそれなりに成果は出ていました。
ですが、時代は変わり、いかに効率よく正解(に近いもの)を導き出せるかがビジネスを成功させるひとつのポイントとなります。
ひとりの人生で経験できることは限界があるため、引き出しと選択肢を増やし、効率的に仕事を進めていくためにも、リーダーには情報収集力がより一層必要となっていくでしょう。
課題解決力
壁にぶつかった際に解決策を導き出す力は、リーダーにとって必須スキルです。
リーダーはフォロワーが解決できない課題の相談先として真っ先に白羽の矢が立つため、少なくともフォロワー以上の課題解決力が必要だからです。
今までは課題が発生したとしても考えるべきステークホルダーが少なかったことと、ステークホルダーの思考の幅も狭かったことから、ある程度課題解決は簡単なものだったかもしれません。それが、最近は人の数も考え方の数も増えてきたため、課題解決の難易度が上がっているといっても過言ではありません。
コンプライアンスがいい例ですが、施策として動き出す際に気にしないといけないものがたくさん増えてしまいました。
複雑に利害が絡み合う課題の解決は、非常に骨の折れることですが、自部門以外の関係者が存在する場合にはフォローでの解決は難しく、リーダーが動かざるを得ません。
状況からさまざまな思惑を紐解き、解決に導くための力が、今のリーダーには求められています。
先見力
先を見る力、つまり目の前のことだけではなく未来がどうなりそうか考える力はリーダーとしても、個人としても「あればあるだけ良い」でしょう。
リーダーシップのところでも記載しましたが、リーダーはフォロワーを目標に向かわせる必要があります。
その目標が現状から予想した未来の姿に対応するためのものだと関連づけることができ、その理由が納得に足るものなら、フォロワーを目標に向かわせることなど容易でしょう。
先見力自体は、平成・令和と先が見えにくい世の中が続いているため、割とずっと必要だったかもしれません。
自分のビジネスを取り巻く数値の変化やニュース、SNSのトレンド等の情報収集を怠らず、そこから先を見通す練習を積み重ねていきましょう。
決断力
リーダーの仕事のうちもっともメジャーなもののひとつは「決断」することです。これができないリーダーはリーダーを降りた方がいいかもしれません。
フォロワーが実行、リーダーが状況把握と方向性の決定を行うのが、組織としての大まかな役割分担であり、決断力に欠けるということはフォロワーに置き換えると「実務ができない」状態だからです。
世の中に情報が溢れ、判断材料も無数にあり、ステークホルダーもたくさんいる状態での決断は、なかなか難しいことでもあります。ただ、目的や目標と照らし合わせて最善なものを常に選ぼうとすれば、決断を間違えることは少なくなっていきます。
ポイントとしては、フォロワーにとって有利な決断をするのではなく、目標達成にとって有利な決断をすることを心がけることです。
フォロワーから嫌われて仕事が進まないことを危惧するリーダーもいますが、それによって決断を間違えることで、目標と違う方向に進むことの方がリスクです。
右か左か、どちらに進むべきかを決めることこそがリーダーの仕事だととらえ、決断の経験値を積極的に増やしていきましょう。
数値力
数値力、すなわち数値をもとに考え、数値から状況を把握し、数値から予測まで行うために数値を読み解く力は、リーダーはもちろん現在のビジネスマンにとっては非常に重要なスキルです。
数値力は、以下2つの理由により重要です。
- 状況を的確に把握するため
- 自分以外のだれかを明確な根拠によって動かす必要があるため
数値を使うことができなければ、時代が進むにつれどんどん複雑になっていく「現状」を的確に把握することができず、「こんな感じだと思う」のように主観でしか事態を把握できません。これでは、なにか課題が発生したときにも適切な解決策を打てずに終わります。
また、数値力のないリーダーは判断材料が数値以外の「なにか」になります。自分以外の人を目標に向かわせるにあたり、決断の根拠があいまいな主観では、だれも説得することができません。
このように、リーダーには数値を扱う力が非常に大切になります。
最近ではインターネットの技術の向上により、ユーザーがどこでどんなページを閲覧し、どれくらいの時間で滞在したのか等、把握できる数値が増えてきています。
時代に取り残されないよう、数ある測定可能な数値から必要なものをピックアップして、業務に役立てたいものです。
コミュニケーション力
コミュニケーションができないリーダーは、仕事を円滑に進めることが極端に難しくなることは想像に難くないと思います。
自分だけで仕事を進めるのではなく、周りの人にも動いてもらって大きな仕事を成し遂げるのがリーダーだからです。
フォロワーに目標を伝えたり、課題解決のためにミーティングをしたり、ときにはプロジェクトの進行にとって望ましくない情報を伝えなくてはならなかったりと、リーダーは人とコミュニケーションをとる機会が非常に多いです。
コミュニケーション力は、リーダーにとって必須のスキルといえるでしょう。
しかも、少し前までは「飲みニケーション」と呼ばれる、いわゆる食事をともにすることでコミュニケーションを取ることもできましたが、2020年以降新型コロナウイルスの影響でそれも難しくなりました。また、リモートワークの普及により直接顔を合わせないで仕事をすることも以前に比べて格段に増えました。
以前よりもコミュニケーションを取ることが難しくなった今、「飲み会に頼らない」「遠隔でも通用する」という、よりハイレベルなコミュニケーション力がリーダーには求められています。
文章や1回の面談におけるコミュニケーションを、今一度見直していく必要がありますね。
ポジティブシンキング
ポジティブシンキングができることはリーダーだけではなくすべての人にとって、この時代を生きるうえで魅力的に映ります。
ネガティブなニュースが飛び交う世の中で、そのまま受け取ってネガティブな感情を抱く多くの人とは一線を画して、別のポジティブな考え方ができる時点で少数だからです。
かの有名なドラゴンクエスト3の性格診断では、
「世の中には楽しいことよりも悲しいことの方が多いと思いますか?」
という問いかけがあります。
これは持論ですが、世の中の楽しいことと悲しいことは比べるものではなく、
そこには「何かが起きた」という事実があるだけで、
受け取り方次第で楽しくも悲しくもなると思っています。
そのため、事実を受け止めたうえで前向きな解釈はいくらでもできるということになります。そういうリーダーのもとに、人は集まってきます。
人が集まってくると、多くの人の力を借りることができ、大きな仕事を成し遂げられます。
加えてポジティブシンキングのいいところは、だれでもできる点です。つまり、現時点でポジティブシンキングがあまりできていなくとも、まったく気にする必要がありません。
ポジティブシンキングは後天的なスキルですからね。
ポジティブシンキングができるようになるためには、たくさんのポジティブに触れて自分の中に引き出しを増やすことが手っ取り早いため、リンク先の記事も参考にしてください。
調整力
多くのリーダーが、「それ単体では売り上げを一切生み出さない部門間などの調整」に時間とエネルギーを使っているのではないでしょうか。
人を巻き込んで大きな目標に向かっていくリーダーにとって、意見の違う人との利害の調整は避けられない仕事だからです。
リーダーが行う調整は、以下のとおりたくさんのシーンで考えられます。
- 目標に向かうことに難色を示すフォロワー
- 新たな動きをするために改善を要求しなければならない別部署
- 目標達成のために予算を承認する上層部
- 連携して取り組むうえで利害が違う社外の関係者 etc.
例を挙げると枚挙にいとまがありませんが、仕事の大きさと比例してステークホルダーが増えることで、調整に割く時間はとんでもなく増大します。さらに、社会が複雑になるにつれて影響範囲が増えて、調整も複雑になってきています。
しかも、調整は面倒なのでだれもやりたがりません。。
異なるバックグラウンドの人たちに、目標達成のためにこちらの意見を承認してもらうことは難しいですが、リーダーとして避けられない仕事だからこそ、意見をまとめて前に進むための合意を得る調整力はリーダーにとって必要です。
ちなみに、相手に自分の意見を通すにはコツが必要です。「上司」を想定した内容ではありますが、調整力の参考としてリンク先の記事もご覧いただくとイメージがつかめるかもしれません。
まとめ
リーダーに求められている10このスキルについてご紹介しました。
時代が変わることで求められている中身が変わっているわけですが、今後さらに変わっていく可能性も十分に考えられます。
時代が変わっても「リーダーは他人を巻き込んで大きな目標を達成する」ということ自体は変わらないため、そのために今の世の中で何が必要かを考え続けることが大切です。
私もがんばります。