プレゼンの場で「相手に伝えたいことが伝わらない!」と感じたことのある人は多いのではないでしょうか。かくいう筆者も、社会人になってから10年以上プレゼンテーションをする機会に恵まれ、年間100回くらいプレゼンをしているのですが、7年目くらいでようやく「相手に伝えたいことを伝えるコツ」がわかってきました。
本記事では、筆者がプレゼンテーションの1,000本ノックを経て掴んだ相手に伝えたいことがしっかり伝わるようになるテクニックを話し方、ジェスチャー、アイコンタクト、言葉、資料作成の5つの分野で17個ご紹介します。
目次
話し方のテクニック
話し方で大切なテクニックは3つです。
大事なことを2回伝える
強調したいメッセージは2回伝えることが有効なテクニックです。
エビングハウスの忘却曲線を聞いたことのある人が多いと思いますが、人の記憶は1日経つと50%失われます。2回以上繰り返す、または期間を空けて復習することをしないと多くのメッセージは忘れ去られてしまうためです。
必要なことは、大切なことを2度言うことの聴衆からの視線に耐える勇気のみです。
伝える前に2秒の間を開ける
伝えたいメッセージを伝える前に”2秒間”だけ間を開けることは、非常に有用なテクニックです。
聞いている人に「どうした? 話飛んだ? なんかあった?」と思わせ、相手の集中力をこちらに向けることで、大事なメッセージを相手の印象に残すためです。
「雄弁は銀、沈黙は金」ということわざ(発言するよりも沈黙の方が価値がある)も古くは9世紀ごろから言われていますので、先人の言うとおり実践しましょう。
小声で話す
一定のトーンで話してきたタイミングで少し間を開けて、小さい声で話す方法もメッセージを強調することができます。
ずっと一定のボリュームで話し続けるのではなく、途中で声が小さい話が入ることで一気に聴衆を引きつけることができるためです。
いきなり小さな声で話すと逆に伝わらなくなってしまうので、2秒間を開けてから実践するのをオススメします。
ジェスチャーのテクニック
プレゼンは、ジェスチャーを用いることで伝えたいことが伝わりやすくさせることができます。具体的なテクニックは以下の4つです。
広げた手は先までしっかり伸ばす
手を広げるようなジェスチャーをするときは、指先までしっかりと伸ばすことを意識します。
手を指先までしっかり伸ばした方が手の動きを大きく見せることができ、聴衆を惹きつけることが可能だからです。
指先までしっかり伸ばそうとしている手のジェスチャーとそうでないものとでは、動いて見える範囲に違いがあります。
ジェスチャーでは、大きな動きをすることを心がけましょう。
力を込める
伝えたいメッセージとともに繰り出すジェスチャーには、必ず力を込めましょう。
ジェスチャーに力を込めることによって、動きに俊敏さが出て、聴衆を惹きつけやすくなるからです。
拳を握るなら力強くグッとしっかり握りましょう。
また、ジェスチャーに力を込めることによって、自分が発するメッセージも自ずと力の入ったものになります。
結果としてほかの言葉との差別化を図ることができ、ジェスチャーとともに伝わりやすいメッセージとなるでしょう。
前かがみになる
強調したいメッセージを伝える際には、少し前かがみになることもオススメです。
物理的に少し聴衆との距離が近くなり、聴衆に緊張感を与え、メッセージが印象に残りやすくなるからです。
人は相手との距離が近づくにつれて、緊張感が増します。
パーソナルスペース、っていうやつです。
これを利用して、相手に緊張感を与えることで、印象に残しやすくする手法です。具体的には、腰の角度を15度くらい曲げて相手の顔を覗き込むようにします。
大切なメッセージの際は、少しだけ前かがみになることを意識しましょう。
うなずく
効果的にメッセージを伝えるジェスチャーのひとつとして、伝えたいメッセージの後に「うなずく」ことで相手にメッセージを刷り込むことができます。
こちらが相手の目を見てうなずくと、高確率で相手もそれにつられてうなずいてくれるからです。ちなみに、相手の目を見ながらうなずくことで、一緒にうなずいてくれる確率を上げることができます。
その結果、「メッセージを聞く」という行動と「うなずく」という行動をセットにすることで聴衆の記憶が定着しやすくなります。
アクティブ暗記とか、シンクロマッスル学習などといわれている、「動きながらだと覚えやすい」というアレです。
「人は忘れる生き物」ということを前提において、どうやったら相手の記憶に残せるかを常に考えてプレゼンすると、成功率が上がります。
アイコンタクトのテクニック
続いて、メッセージが相手に届きやすくなるアイコンタクトのテクニックです。
目を見開く
伝えたいメッセージを話すときに、「カッ」と目を見開くと、メッセージに力強さが生まれます。
通常時と違う目力でメッセージを伝えることによって、聴衆に通常とは違う雰囲気を与えられ、印象に残すことができるからです。
正面を向いているときに視線だけを少し上にあげ、そのまま相手を見つめるようにするとうまくいきます。
「目は口ほどに物を言う(目は口ほどに物を言うとは、情のこもった目つきは、言葉で説明するのと同等に、相手に気持ちが伝わるものだということ。)」とはよく言ったものです。
必ず相手の目を見る
相手の目を見てメッセージを伝えることは、この17個のテクニックの中で一番重要かつ必須のテクニックです。
相手の目を見て話すことによって、見られた相手は当事者意識を持ってこちらの話を聞くようになるからです。
逆に、目を見られていない状態だと聴衆は「自分が興味のある話」以外は聞こうとしません。
学校に通っていた頃に教科書を読むだけだった先生の話が頭に入ってこないのと同じです。
常にだれかの目を見ながら話してもいいくらいなので、最優先で相手の目を見ることを意識しましょう。
言葉選びのテクニック
言葉を慎重に選ぶことによって、メッセージの伝わり方に差が出ます。以下の3つのフレーズを試してみてください。
「ここだけの話ですが」
人は噂話や内緒話が大好きです。それ自体が好きな人もいますが、「人が知らないことを知っている優越感」が心地いい、というのが人の習性です。
「ここだけの話」というフレーズが「特別な話」感を演出し、人の自尊心を満たすことによって、メッセージが印象に残ります。そして違う人に話したくなります。
人に話せるということは、そのメッセージを自分の中に落とし込んでいることの証拠なので、「ここだけの話」というフレーズがメッセージの強調に効果的なのです。
「私が一番伝えたいことが」
ストレートに「私が一番伝えたいことは●●です」と伝えることも効果的です。
いくらこちらが「ここが一番大切なんだ!」と思ってメッセージを伝えたとしても、聞き手によって受け取り方が全く違います。学校の授業や会社の上司の話などを聞いたときに、メモしている内容が人によって違うことをイメージしていただければと思います。それを防ぐのがこのフレーズです。
「ここテストに出るよ〜」と先生に言われると、全員こぞってメモしていたのを思い出してください。アレをやる、ということです。
「大切なので何回でも言います」
大切なことを何度でも伝えることは、エビングハウスの忘却曲線から考えても有効です。プレゼンの時間にもよりますが、仮に1時間プレゼンするとしたら、聴衆はその間にたくさんの情報を受け取ることになります。
情報が多ければ多いほどひとつひとつが頭に残りづらくなるので、キーワードのように何度も伝えることで、聴衆の記憶に残す意味で「大切なので何回も言いますね」と伝えるのは効果的です。
資料作成時のテクニック
話し方だけではなく、資料作成時でも伝えたいメッセージが伝わりやすくするテクニックがあります。基本的には、通常時のテキストと差別化を図ることで、伝わりやすいメッセージとなります。
以下のうち、自分の資料のニュアンスにあったものを選びましょう。
文字を大きさを2倍にする
資料作成時に、伝えたいメッセージのフォントサイズを通常の2倍にしてみましょう。
文字の大きさはそのまま聴衆の視覚にダイレクトに訴えかけるので、印象に残りやすくなります。
通常のフォントサイズを18で作成しているとしたら、大切なメッセージを36にして作成してみましょう。
グッとメッセージ性があふれるスライドとなるはずです。
ワンフレーズで伝えられるよう言葉を削る
長い言葉よりも、短い言葉の方が人の記憶に残りやすいです。
- ROLAND:「俺か、俺以外か」
- 孫子:「攻撃は最大の防御」
- クラーク博士:「少年よ、大志を抱け」
まぁチョイスは置いといたとして、短いフレーズの方が有名な名言が多いです。
資料の文字の大きさを2倍にすると、その分短いフレーズである必要もありますので、伝えたいメッセージはできるだけ言葉を削りましょう。
影をつける
通常の文章をそのまま記載し、伝えたいメッセージだけ影をつけて立体感を演出するのも効果的です。
蛍光マーカーをつける
強調したい部分にマーカーを引いたようなデザインをするのも伝わりやすいです。
本記事のアイキャッチ画像のようなイメージです。
普段使っている文字とは色を変える
文字の色を変えることも有効です。
学生時代のノートなんかでは、赤いボールペンで大事なことを書いていた人が多いと思います。
オススメ複合テクニック
これまで記載してきたテクニックは、ひとつひとつを独立させて使うこともありますが、どちらかというといくつかを組み合わせてメッセージを強調することが多いです。筆者の経験上のオススメの組み合わせを3つご紹介します。
- 必ず相手の目を見る+伝える前に2秒の間を開ける+前かがみになる+小声で話す
- 必ず相手の目を見る+大事なことを2回伝える+うなずく
- 必ず相手の目を見る+力を込める+「大切なので何回でも言います」
上記以外にも組み合わせはたくさんありますが、いろいろ試してみてぜひご自身にあった物を見つけてください。
内容をより相手に特化して話すための準備手順
テクニック以外にも、プレゼンの内容を工夫することで、より聴衆に刺さるようなプレゼンにすることができます。聴衆に刺さる可能性を上げられる内容に仕上げる手順は以下4ステップです。
プレゼンをするシチュエーションはさまざまありますが、営業に特化して筆者が組み上げた構成を以下記事にまとめています。営業プレゼンの内容を検討している場合は参考にしてみてください。
さいごに
プレゼンのメッセージを確実に聴衆に伝えるためのテクニックについて記載してきました。ぜひ記載のテクニックを使って、直近のプレゼンに臨んでみてください。
ただし、伝えたい情報を3つ以内に絞ることをオススメします。情報が多すぎると、聴衆が「結局どれが大切な情報なの?」と困惑してしまうためです。
プレゼンテーションを行う目的は、「相手になんらかのメッセージを伝えて、行動を変えさせる」ことです。なんのためにプレゼンをするのか? という目的をメッセージに込めましょう。