前例のない仕事に取り組むとき、必要になるスキルのひとつは企画力です。
そんな企画力のない部下を育てるには、企画の仕方を丁寧に教える必要があります。
部下に効率よく企画力を養ってもらうためには、企画がうまくできるようになるフレームワークを活用して、たくさん実践を積んでもらう方法が効果的です。
本記事では、企画力のない部下を育てるための企画フレームワークをご紹介します。
ぜひご自身のチームで活用してみてください。
目次
企画力のない部下を育てるフレームワーク
企画力のない部下を育てるためには、企画内容の最低限のレベルを担保できるようなフレームワークが必要です。筆者は、部下の企画力を育成する際には、以下のテンプレートに沿って検討してもらうようにしています。
例とともにご紹介するので、参考にしてください。
- 企画の目的はなんですか?
例:部門間の情報量の差をなくしたい - 現状はどうなっていますか?
例:部門間の情報交換や情報伝達量に差がある - 理想の状態はどのような状態ですか?
例:全部門同じタイミングで同じ情報量が流れる状態 - 理想の状態は、何をどれくらい満たすことで達成されますか?
例:
・全部門共有の場で情報公開が100%行われること
・各部門同士の直接のやり取りを0にすること
・流れた情報の確認を100%にすること - 1つ前の質問で記載した項目はどのような手順で達成しますか?
例:
・全部門共有の掲示板を作成し、その他掲示板は削除
・直接のやり取りを受けた側が匿名で応募するフォームの作成
・情報の確認を管理する仕組みの構築 - 各手順は具体的にどのように進めていきますか?
例:
・全部門共有の掲示板を作成し、その他掲示板は削除
1.全部門共有掲示板の作成
2.制度の共有
3.その他掲示板の削除
・直接のやり取りを受けた側が匿名で応募するフォームの作成
1.フォーム作成
2.制度の共有
・情報の確認を管理する仕組みの構築
1.情報未確認者の管理表の作成
2.情報未確認者へのリマインダー設定 - 各手順のスケジュールはどのように設定しますか?
例:各作成者を1カ月以内に作成後、制度の共有をまとめて行う - 本企画での利害関係者(影響がありそうな人)はだれですか?
例:人事部 - 利害関係者はどのような意見・質問をすることが考えられますか?
例:評価内容などの公開前の情報や評価制度素案などの込み入った情報共有はどうすればいい? - 利害関係者への意見・質問へはどのように回答しますか?
例:冒頭に【未確定|素案】などのタイトルを入れることで、混乱は発生しない
いくつかの項目について、少し解説していきます。
企画の目的の定義
企画をするうえで一番大切な部分である「目的(なんのためにやるのか)」を明確にすることは必須です。
最初かつ常に目的を意識させることで、部下が考案する施策がブレずに済むからです。
企画力のない部下の特徴のひとつとして、「考え始めてしまうとあれやこれや発想が飛び、全部記載することでとっ散らかった内容になってしまう」ことがあります。
目的を最初に据えたテンプレートを準備することで、すべての施策は目的を達成するためのものという意識付けができるようになります。
現状分析
現状を的確に知ることは、企画を成功させるうえで非常に大切です。
現状を誤認していると、この後検討する具体的なステップに過不足が生じ、無駄な工数が生まれるか、目的を達成できないかのどちらかに陥るからです。
スタート地点を間違えても目的が一緒なら、頂上に到達できそうな気もしますが、本当に対応が必要な課題を見落とすこととなるため、難しくなるでしょう。
現状のリサーチは良質な企画をするうえで非常に大切なことを部下に伝えましょう。
企画における理想の定義
理想の定義とは、企画の目的である「こうしたい!」の「こう」の部分を明確にすることです。
基本的に企画とは「だれかの何かを解決するもの」であり、「どういう状態なら課題は解决されたといえるのか?」を考えるのが理想の定義です。
ゴール設定、と言い換えてもいいですね。
このステップは、部下が次に検討する目標値を考えやすくするために設置しています。
理想を達成する目標値のリストアップ
理想の状態を作り上げるためには、現状分析から判明した問題点がどのようになっていることが必要なのか、測定可能な内容で部下にリストアップさせます。
ポイントは測定可能な内容になっているかどうかです。そうなっていない場合、さまざまな施策を実行しきったあとで「結局当初の理想は達成されたのか?」という問いに明確に答えられなくなるからです。
ここでは数値化できるものになっているかどうかをこだわってチェックしてみましょう。
手順の具体化・スケジュール設定
ここまできて初めて手順の具体化に入ります。
資料を作るときにまずはアウトラインを作成するように、企画を作るときもまず骨組みを作成するほうがうまくいくってことです。
部下に自由な発想をしてもらうチャンス項目であるため、絶対に守らなければいけないルール(コンプライアンスや予算等)を理解させたうえで自由に作成してもらいましょう。
利害関係者への思案・対応
企画者が陥りがちな失敗のひとつに、「全力で考えて形にした企画が上司や他部署の反対でたち消える」ということがあります。
おそらくあなたが管理者である場合、部下が意気揚々と作成した企画書を見ながら、「これはあっちの反対を買ってうまく進まなさそうだな」と思った経験があることでしょう。
できあがってからひっくり返されるのは部下も管理者側もうれしくありません。企画時点で想定させるようにすることで、よい内容の企画にすることができるでしょう。
提出前チェック用の5項目
部下がフレームワークを活用して企画ができあがったら、提出前に以下の項目をチェックさせるようにしましょう。提出後の指摘事項が減るはずです。
- 目標の達成は目的の達成に繋がるか
- ステップは漏れがないか
- スケジュールは現実的に可能か
- 代替手段は考慮されているか
- 手段の選択は数値に基づいてされているか
特に、代替手段が考慮されているかどうかと、手段の選択に数値的な根拠があるかを確認しましょう。
企画者は、せっかく思いついたひとつのアイデアが唯一絶対なものだと思い込んでしまいがちで、アイデアがひとつ出てからはほかのアイデアの検討を一切しなくなります。
そうやって企画者が「これが一番いい!!」と思っている唯一のアイデアは、往々にしてほかの人から見るととても稚拙に見えることが多いです。
筆者も結構痛い目を見ています。
複数のアイデアの中から現在のアイデアが最善と思い立った理由に数値的根拠があれば、だれの目から見ても「その選択肢しかないよね」と共感を勝ち得ることができるでしょう。
さいごに
今回のフレームワークは、企画の「カバー範囲」の底上げをすることが目的です。カバーされた内容の深さは、実践を繰り返す以外にないでしょう。
また、企画のゴールは「さっさと動き方を決めて動き出すこと」であって、一発ですごいアイデアを作ることではありません。ある程度作成したら、とっとと管理者を含む利害関係者に見てもらうべきです。
フレームワークを活用して部下の企画力のボトムアップができたのなら、あとはアイデアの有無のため、企画者1人だけで考えさせるのではなく、複数人で考えて、最速でいいものを作れるようにしましょう。