やる気のない部下に困っているマネージャーは本当に多くいらっしゃいます。この記事にたどり着いた人は以下のような悩みを抱えているのではないでしょうか?
- どうやって指導したらいいのか?
- 指導したところでどうせ変わらないから放置しててもいい?
- 面談するのは効果的なのか? どんな面談をしたほうがいいのか?
- やる気がない年上の人はどうしたらいいのか?
- 辞めさせていいの?
- そもそもやる気のない部下ってなんでやる気がないの?
本記事では、上記のような「やる気のない部下」にまつわる悩みの対処法を、私の経験から効果があったもののみ抜粋してお届けします。
目次
やる気のない部下の指導・対処法
やる気のない部下の対処法に困っています。何かいい方法はありませんか?
やる気のない部下の対処法は、部下の不満を解消し、部下と一緒に目標設定して、今やっている仕事の目的を理解させることが効果的です。
やる気のない部下の効果のある対処法は以下の3ステップです。
この手順が効果的な理由は、部下がやる気をなくす原因を潰す対処法だからです。
部下をどうにか改善しようとすると、「あれを伝えたらいい」「これを伝えたらいい」など、マネージャーの立場から改善策を考えてしまいがちです。
ただ、それは往々にして「なぜ部下のやる気がなくなっているのか」という原因を無視した「独りよがり」の改善策となってしまい、部下に響かないことが多いのです。
たとえば、部下の仕事の成果が思うように出ない場合、原因を確認せずに「きっとやる気がないからだ!」と思って熱血指導をしてしまうような感じです。
これではその指導を受けた部下は「なんかまた上司が言ってるよ」くらいにしか思わず、なんの効果も得られません。
部下がやる気をなくすメカニズム
部下は、何かしらの不満を持ったとき、それをきっかけに「なんで今こんなことしてるんだろう」「なんのためにがんばっているんだろう」と考えてしまうことによって、やる気を失います。
以下の図が、部下のやる気がなくなっていく仕組みです。
この仕組みを理解しなければ、一時的な指導で部下のやる気を引き出すことができたとしても、いずれまた同じ事態に陥ります。そのため、不満の解消、見失った目的や目標の設定、仕事の目的の説明をすることで、根本から解決し部下のやる気を引き出すことができるのです。
根本にある不満を解消する
まずは何がきっかけで部下のやる気がなくなってしまったのかを知る必要があります。
仮に一時的に部下がやる気を取り戻したとしても、また同じことがきっかけでやる気を失ってしまう可能性が非常に高いからです。
「何に不満を持っているのか?」「気に入らないと思っていることは何なのか?」など、部下が仕事に対してどんなことを思っているのかをまずは徹底的に把握しましょう。
個人的なオススメのヒアリング方法は、部署全員からの不満を目安箱のようなものを設置して普段から集め、その内容をもとに面談をする方法です。
この方法がオススメな理由は、安心感と正当性を生み出すことができるからです。
「全員が」「普段から」不満を吐き出せる場を作ることで、不満を伝えることの抵抗がなくなりますし、不満の内容を改善するために詳細をヒアリングしたいという目的で面談を正当化できます。
非常にさりげなく部下の不満を聞ける方法なので、ぜひお試しください。
ただし、不満を聞いたとしても必ずしも改善できないものもありますので、その場合は「部下の不満を解消しようとする姿勢」を見せましょう。
具体的には、改善に向けて実施したことと、その結果、そうなった背景を部下にフィードバックしましょう。ここまでやれば、「自分のためにここまで動いてくれたんだな」と部下は思ってくれて、不満を解消できなかったとしても自分の中で納得することができます。
管理職とはいえ雇われている身なのでできないことがあって当たり前です。
部下と一緒に目標設定し、仕事と結びつける
不満をヒアリングする面談の中で、部下の人生の目的を聞くか一緒に設定するかして、それを仕事と結びつけるのが次のステップです。
不満が解消されただけの状態だと、部下はこんな感じになります。
不満なことはまぁ解消されたな。
……で、なんのためにがんばろっかな?
がんばる目的を失ったままです。ここから、なりたい自分ややりたいことと仕事がリンクしていることによって、部下のやる気は出ます。
たとえば、部下に「人よりもお金を稼ぎたい」という目的があるのなら、人よりも多くの仕事をすることで給料に反映されるから今の仕事をしっかり取り組むとともに、積極的にできる仕事を増やしていこうという指導をすることで、部下のやる気を引き出すことができます。
ゴールから逆算して今の活動に取り組んでもらう方法ですね。
結果として、納得した部下は前向きに取り組んでくれるようになります。
この段階で必要なことは、部下の目標や目的を確認する方法です。
部下が抱えている不満をヒアリングした流れで、以下のように話すとスムーズに聞くことができます。
思っていることを素直に教えてくれて助かったよ。いろいろ考えながらもいつもがんばってくれててありがとうな。がんばってくれる理由って何かあるの?
こんな感じで聞くと、大体あるかないかの2択になるので、答えによらず部下の回答を深掘りします。そうすることで部下が目指しているものがなんとなく分かってきたら、それと今の仕事を結びつけていきましょう。
仕事の目的を理解させる
「なんのためにこの仕事をするのか」という目的を上司が部下に伝えることで、やる気を出させる方法です。
目的を理解させることで、仕事への納得感を与え、やる気を出させるためです。
たとえば、業務終了の報告という業務があるとしましょう。
業務終了のたびに内容の報告をしてもらう目的は、みんなの仕事ぶりを聞いてもっとラクな方法で仕事を進められないか改善していくためなんだよ。
そうだったんですね! そしたら思いの丈を報告します!!
目的をきちんと説明するだけで、部下は納得の上で対応してくれるでしょう。
このようにしっかりと説明することで、納得してくれた部下は仕事にやる気を出して取り組みます。
納得できなければそれが態度に現れるので追加で説明が必要だと判断しやすくなるというオマケつきです。
実際のところ、この方法でやる気が出るというよりは、不満を解消し、仕事と部下の目的を結びつけることでやる気を出し、仕事の目的を説明することでそのやる気を継続させるというイメージです。
というのも、部下が不満を持ちやすいことの一つに、「この仕事を何のためにするのか分からない」ことがあります。せっかく不満を解消して仕事と部下の目的を結びつけたのに、またよく分からない仕事を振られると、部下のやる気がまた下がってしまいます。
そのため、「何のためにこの仕事をするのか」という仕事の背景や理由は普段から説明するクセづけをしましょう。
必要なことは、ひとつひとつの仕事に対してしっかりと目的を説明する根気です。
やる気のない部下と面談する上での注意点
一連の対策を打つためには、どうしたって面談が必要です。実際に面談をする上での注意点は以下です。
- 部下を叱責する面談ではないことを自覚すること
- 部下の話を一切否定せず、必ず受け入れること
- 理由を聞くときは「なぜ」というフレーズを使わず、「そうなったきっかけは何だったの?」と聞くこと
- 部下に仕事を依頼するときは、自分自身が仕事の目的をしっかり理解しておくこと
部下との面談の基本的な目的は「叱責」ではなく「改善」です。そのため、部下が叱責されていると感じてしまうことをできるだけ排除する必要があります。
具体的なものが「部下の話を否定すること」と「なぜ? と質問すること」です。自分の話を否定された部下はその瞬間に防衛ラインを張って、本当のことを言わなくなりますし、「なぜ?」という質問の仕方はそれだけで高圧的な印象を部下に与えます。言い回しには最大の注意を払って面談に臨むことをオススメします。
なぜそういう風にしたの?
あ、これは言い方は丁寧だけど完全に怒ってるやつ。。
また、部下に仕事を依頼するときに、「その仕事は何のためにやるのか」を説明する必要がありますが、そのために管理職はその仕事をする目的を徹底的に理解しておく必要があります。
もし仕事の目的を理解していない場合、多くの管理職が
上から降ってきたことだから俺たちはやるしかないんだよ!
と伝えてしまいます。
「上から降ってきた仕事だから」という説明は、正直管理職にとって非常に使いやすい言葉です。
どんな仕事の説明にも使えちゃうからです。
ただ使いやすい反面、部下からの印象は激落ちします。
じゃああなたはそこに座っている必要はないですよね。直接上の人から話をしてもらったら済む話なので。
と言葉には出さずともこのように思います。
つまり、管理職として部下のやる気を削がずに仕事を依頼するためには、「自分が心から必要だ」と思える仕事のみであり、その状態になるまで自分の上司を質問責めにする必要があるのです。
このように、面談の場では部下を叱責せず、面談の準備として部下に依頼したい仕事は「なぜやらなければならないのか」を徹底的に自分で考え、上司に質問しておきましょう。
やる気のない部下が自分よりも年上だったらどうしよう?
年上の部下にやる気がない場合は、以下の2点を伝えることで動いてくれます。
年上の部下がやる気をなくしてしまう理由は1つで、待遇に対する不満です。
つまり、以下のようなことを年上の部下は思っています。
- なんで年下に従わなきゃいけないんだ
- 俺はもっとできるのに
- 会社は俺の力を分かってない
- こんなはずじゃなかったのにな
これが年上の部下の不満なので、この部分を解消し、「そもそも何のために仕事をするのか」という目的を再認識させれば、経験豊富な年上の部下は必ず管理職の味方になってくれます。
年上の部下への対処法や言い回し、対応の注意点をより詳細に記載した記事もありますので、ぜひご覧ください。
やる気のない部下を放置していいかどうか
やる気のない部下の指導に困った場合、放置するのは絶対にNGです。
部下を放置することで、状況は悪化こそすれ、好転することは絶対にないからです。
放置されたやる気のない部下によって引き起こされる組織の不具合は以下です。
ヤバいことだらけですね。
やる気のない部下は放置しておいて何もいいことはありません。必ず改善するための策を打ちましょう。
やる気のない部下は辞めさせてOK?
結論、辞めさせてもいいですがオススメはしません。
頭数が1人減ることで仕事が回らなくなるからです。
実際に私の組織で期中に自己都合で退職した部下は何人かいますが、そのときは例外なく仕事の量が増えて苦しくなります。
改善して戦力に変えるという手段を辞めさせる前にとるべきです。
仮に辞めさせる場合、会社都合でクビになれば部下が次の就職がうまくいきづらくなって困りますので、こちらからは言わず、部下が自ら「辞めます」と話すのを待ちましょう。
やる気のない部下の特徴と適性のある仕事
やる気のない部下によくある特徴は以下です。
- 与えられた仕事以上のことをしない
- 積極性がない
- 挨拶の声は小さい
- 笑顔が少ない
- 余計に怒られたくはないから最低限のラインの仕事はこなす
経験上これらのサインのうち3つ以上該当すれば、その部下はやる気を失っている可能性が高いです。不満のヒアリングと目標の再設定をおこないましょう。
やる気のない部下を言い換えると、「昔はやる気があったけど、今はボタンの掛け違えで一時的にやる気を失っている人」です。内定式からやる気のない人は存在しません。
がんばっていこうというやる気に満ち溢れていたにもかかわらず、何かしらの不満があってやる気を失っているだけなのです。
このことを理解しているかどうかで、やる気のない部下に対する考え方が変わりますよ。
ただ、人間の考え方は十人十色であり、あれやこれやと部下にやる気を出してもらおうと取り組んだとしても、効果が出ないこともあるかもしれません。
その状況でも部下に仕事を割り振らないといけないマネージャーは、周囲に影響が出ないように適材適所に配置する必要があります。
やる気のない部下がどんな仕事に向いているのかもご紹介します。
向いている仕事
やる気のない部下に向いている仕事は下記です。
要するに、正解があって右から左に流す仕事です。与えられたことを粛々とこなす仕事には、やる気の有無は関係ないからです。
「今日はやる気ないなぁ」と思ったところで、印刷した資料が汚くなることはありません。コピー機が印刷しますからね。
もし部下がやる気のない状態でどうしても仕事を振らなければならないときには参考にしてみてください。
向いていない仕事
やる気のない部下に向いていない仕事は下記です。
やる気のない部下に任せるとマネージャーが苦労する仕事
向いていない仕事は、正解がなく自分で考えないと進まない仕事です。
これらの仕事には、「もっとよくしていこう」というやる気が不可欠だからです。もしこれらの仕事にやる気のない部下を振らないといけないときは、創造的な仕事ではなく、その後に待っている作業を割り振るようにするとうまくいきます。
たとえば、企画を考えさせるのではなく、企画をこちらで考えた後に、それを資料に変える作業のみ依頼する、のようなイメージです。
「考える」という工程を極力省いた状態で仕事を割り振りましょう。その方がお互い幸せです。
さいごに
やる気のない部下の対処法に共通していえることは「部下のせいにせず管理職自ら改善しようとすること」です。
部下がやる気がないことを部下のせいにして切り捨てるのではなく、そういう部下を指導して成長させることが管理職の仕事だからです。
指示を出しても部下が動いてくれないのは、部下が聞き分けがないのではなく、自分の指示の出し方に問題があったと考えることで、改善をはかることが必要です。
コントロールできない部下よりもコントロールできる自分を修正することで、組織を改善することが大切です。