仕事は真面目に取り組んでいるけれど、イマイチ自信がなくくすぶっている部下。
仕事の姿勢はいいのに、自信がないから積極性にかける部下。
私の元にもいたのですが、とある方法を実践することで、どんどん明るくなりハキハキと自分の意見がいえる部下に成長してくれました。
本記事では、彼らを変えるために私が実践した中で成功した方法を細かいところまで記載します。
同じ悩みを抱えるマネージャーの少しでも力になれますように。
目次
部下に自信を持たせる方法
私が実践した、部下に自信を持たせるために行った指導方法は以下のようなものです。
- 概要:自分ができるようになったことを細かく記録してもらう
- 頻度:毎日記録してもらう
- 内容:どんなに小さいことでも、業務に関連していればOK
- 報告タイミング:毎週金曜日の就業時間内
- 記録媒体:Googleスプレッドシート
この方法で、自信がなかった部下はどんどん自信に満ち溢れて、積極的に仕事をしてくれるようになりました!!
※パイルアップというのは「積み上げる」という意味です!
頻度
部下ができるようになったことを記録するのは毎日というルールにしていました。
次の日になると忘れてしまう可能性があるためです。
初めは面倒に思うかもしれませんが、思い立ったタイミングでストレスなく記録してもらうための工夫を凝らしました。具体的には、スマホで記録でき、そのまま共有ができる媒体を使うということです。
あと、「できた!」と本人が思った瞬間にそれを記録することで成功の余韻を持たせることもできますし、そのタイミングで今までできるようになったことの一覧を見ることで、「できることが増えた!」とさらに気持ちを上向きにさせることができます。
内容
内容は業務に関連していることであればなんでも構いません。
いろんなことを記録させた方が、部下がいろんなことにチャレンジしてくれるのでは? と私が思ったからです。
業務の報告の仕方、取引先のアポの取り方、デスク周りの掃除の仕方など、本当になんでもOKです。
たくさん記録してもらうことに意味があるので、どんなに小さいことでも記録させるようにしましょう。
報告方法
私は週に1回の頻度で、部下にできるようになったことを振り返ってもらって、報告してもらうようにしています。
毎日やるとお互いに面倒になってしまいますし、月に1回だと大半を忘れてしまうからです。私が実践している中でも週に1回という頻度が絶妙だと感じています。
実施するタイミングは毎週金曜日の夕方の時間です。ここでポイントとなるのが、時間外に「やっておいてね」と指示をするのではなく、業務時間内に時間をとることです。
これには理由が2つあります。
- 「時間外にやっておいてね」なんて雑に振った仕事では部下を成長させることなどできないと思うから
- 時間内に実践してもらって、その記録を見ながら部下と軽く面談をすることで部下に1週間の区切りをつけるのと、次週への気づきを与えたいから
そもそも業務時間外にやっておいてねと指示をされるような仕事は、部下のやる気を削ぐだけです。
また、ひたすらできるようになったことを書き出していくと、だいたいその1週間で部下が一生懸命取り組んだことが並びます。
それに対して、「この部分をしっかりがんばってくれてありがとう!」と褒めてから、次にもっと同じ分野でのできることを増やしていってほしいのか、もしくはまだできることが少ない分野に注力してもらうのかを部下と話し合うことで、確実に様々な業務ができるようになります。
部下に自信を持たせることが目的なので、「どの分野の力が伸びているのか」を中心にフィードバックするのがオススメです!
つまり、週ごとに部下は明確な方向性を持って経験値を増やしていけるので、自信を持って仕事に取り組めるようになるまでのスピードが上がるのです。
媒体
私がオススメするのは、Googleスプレッドシートにて記載する方法です。
Googleスプレッドシートとは、オンラインで気軽に共有できるエクセルのようなものです。パソコンやタブレット、スマートフォンから以下のようにいつでも気軽に閲覧することができます。
手書きのメモでもいいのですが、記録した後に私と部下で共有したり、部下が自分のできることを振り返ったりするときに手書きのメモだと時間がかかったりかさばったりしてしまいます。
それに比べてGoogleスプレッドシートは紙を必要とせず、共有されている状態ならいつでも見ることができますので、はるかに効率的です。
この方法が効果的な理由
部下ができるようになったことを箇条書きしてもらう一番の理由は、部下の小さな成功体験をマネージャーと部下の間で見える化するためです。
部下が仕事に自信を持てない原因はなんでしょうか? 私は下記の4つだと考えます。
これらの原因を、部下ができるようになったことを箇条書きしてもらう指導法による、以下の3つのメリットですべて潰すことが可能です。
ノウハウの蓄積でできるようになったことの数が部下に自信を持たせる
まず、あなたから指示された仕事をそもそもやったことがないため自信がないケースです。
部下が仕事を始める前にしっかりと指導をして、部下に仕事をさせてみます。その結果できるようになったのであれば、手帳でも自分のスマホでもなんでも結構ですので記録をしていきます。
そうすると、記録した場所に部下ができるようになったことがどんどん溜まっていきます。
これを定期的に見直すことによって、「自分はこれだけたくさんのことができるようになったんだ」と認識してもらえるようになり、それが自信へとつながっていくのです。
しかもそれが自分に向いていないと思っている仕事の場合はいかがでしょうか?
この仕事は自分に向いていないと自分では思っているけど、できちゃんだよね。
なんて、「自信はあるけど向いてないぜ」みたいなツンデレな態度をしていそうな部下を想像できませんか?
自分にできることが増えれば、向いていない仕事だったとしても「自分はできる」という自信に繋がります。
正しい方法を保存できる
仕事のやり方が合っているかどうか不安になるのは、部下が毎回自分の中でのやり方で仕事を実践していることが原因です。
ただこれも、最初にあなたが指導したやり方を実践させてみて、その結果うまくいったのならそれを記録しておくことで、その後は成功したやり方を常に自分の手元に置いておくことができます。
その結果、仕事のやり方が合っているかどうかという不安を部下は抱かなくなり、自信に溢れて仕事に取り組んでもらえるようになります。
このように、やり方が合っているかどうか不安な場合も、部下ができるようになったことを書き出すだけで解消できます。
今後の失敗を防ぐマニュアルにもなる
成功パターンを常に記録しておくことで失敗することが減り、部下の自信につながります。
蓄積された成功体験が、自分で作り上げたマニュアルになるためです。
定期的に見直すことで、「前回成功したやり方」をリマインドでき、繰り返し実践することで失敗がなくなります。
失敗を恐れていて自信がない部下もこれでバッチリです。
私の実体験
実際に私もとある新入社員と仕事をしていたときにこの方法を活用していました。
彼は私の下に配属になるまでは、前の部署で自信をほとんど失ってしまうくらい追い込まれていました。そのため、何をするにも怯えながら仕事に取り組んでいました。彼と仕事をすることになった最初のタイミングで、
毎週金曜日に君がが1週間のうちにできるようになったことを一覧にして報告してほしい!
ということを伝え、彼はそれをやってくれました。
毎週彼にフィードバックをしていった結果、彼はどんどんできることが増えていって、
いろんなことが覚えられて楽しいです!
と話してくれるようになりました。
それまでいた部署では考えられないくらい明るくなったと周りの人からも言われて、彼はさらに前向きに仕事に取り組んでくれるようになりました。
年上の部下に実践したときの言い回し
先ほどの例は1年目の社員の場合だったので、自信をつけてもらえるようにいつもフィードバックしていましたが、年上の部下の場合はできるようになったことの箇条書きをする理由を変えて伝えています。
具体的には、
1週間で増えた技術を記録してください。これは○○さんができることとこれから覚えることを明確にして、お互いの指示や相談の時間を節約するためです。それともうひとつ、○○さんが技術をまとめてくださることで今後の礎にしたいからです。
というように、本当は積極的に仕事をしてもらうために自信をつけてもらうことを目指して指示します。
その際に理路整然とした理由と、部下に協力してほしいという伝え方をすることで、反感なく取り組んでもらえるようになりました。
年上の部下に何か依頼したり指導したりするときの効果的な言い回しは、以下の記事でまとめていますので気になった方はご覧ください。
この指導法を活用するときのポイント
私が部下にできることの書き出しを指示するときに気をつけているポイントが3つあります。
内容とその理由を簡単に解説していきます!
書き出す個数にこだわらせる
部下に取り組んでもらう最初のタイミングで、私は「小さいことでもいいので、個数にこだわること」をルールとして部下に与えています。
部下に個数にこだわらせるのには2つ理由があります。
- 部下の自信を恒常的にに上昇させるため
- 部下が工夫しながら仕事に取り組めるようにするため
部下の自信を恒常的に上昇させる
先週よりも1つでも多くのことができるようになったのであれば、それは先週を上回る勢いで成長ができているということになります。
その個数と努力を褒めることによって、部下は「これは正しいことなんだ」と認識してくれます。
人は褒められると、もっと褒められたいという思いが出るため、その行動を継続してくれるのです。
その結果、どんどんできることが増えていく過程と、「業務においてできないことがほとんどない」状態になった結果により、部下は自信に満ち溢れていきます。
部下に仕事をするうえでの工夫をさせる
できることの個数を増やすためには、今できることに工夫を凝らして昇華させなければならないため、その過程で部下に工夫と改善のクセづけをすることも狙っています。
1週目より2週目、2週目より3週目の方ができることがどんどん増えていくため、ちょっとやそっとでは新しいスキルを身につけることは難しくなります。
前の週よりもできるようになったことが少ないということは、できるようになったことが増えてきて仕事に対する習熟度が上がってきたということなので、素晴らしいことです。
ただ、その状態が長く続くと新しい発見がないため必ず仕事に対して「なんか飽きてきた」という思いが生まれます。
これを意図的に防ぐことが可能となります!
たとえば仕事をし始めた頃や新しいプロジェクトに携わり始めるときは、大変ですがあっという間に時間が過ぎていきます。
その状態のほうが、後から振り返ったときに「あのときは大変だったけどそういえば成長していたなぁ」と思うはずです。
この状態を、部下ができるようになったことの個数にこだわらせることによって意図的に作り出すのです。
さらに、このやり方がクセづくことによって、どんな仕事をしていても「何かもっとできることはないかなぁ」と部下の工夫を引き出すことができるので、あなたがあれこれ指示を出さなくても、部下が自分から工夫してくれるようになります。
できるようになったことの個数が前週を下回った場合はポジティブに指導する
たとえ前週よりも個数が減っても叱るのではなく、ポジティブに指導しましょう。
なぜなら、この指導方法の最終的なゴールは部下に業務を覚えさせることではなく、自信に満ち溢れさせて部下が自ら改善や工夫ができるようになることだからです。
叱られることで部下は自信を失いますし、そこから工夫は生まれません。
そのため、個数が減った際にもポジティブにリアクションするようにしましょう。
実践例
私がポジティブにリアクションしている実際のやりとりを記載します。
報告します。今週できるようになったことは4つでした。
報告ありがとう! 前の週はいくつだったっけ?
5個でした。
そうか、前の週よりも少なくなってきているということは、君が仕事の仕方をたくさん覚えてきてくれた証拠だね、さすが!
ありがとうございます!
そうやって一通り仕事ができるようになった君だからこそ、1つお願いがあるんだ。今週できるようになったことよりも、来週できるようになったことを増やすことを意識してみてくれないかな?
はい、でももうだいたいのことは記録しているので、新しいことを増やせないのですが……。
そうだよね、君だけじゃなく多くの社会人はそう思うと思うんだ。けれど、できるようになったことの今のやり方は本当にもうこれ以上改善しようのないくらい完璧かな? おそらくいろんな人から仕事の仕方を聞いて、自分でできるようになったことを書いてくれているよね?
はい、そうです。
そうだよね。ただ私が個人的に思うのは、君の人生の時間は限られているから、できるだけ時間を節約して、君の人生を豊かにするために時間を使ってほしいんだ。今できるやり方は教えてくれた人からしたらいい手段かもしれないけど、時間や効率を最大限突き詰めて、君が人生を豊かにするために使えるやり方かな? もっと時間をかけずにできるんじゃないかと思うことはない?
たしかにそう言われてみれば、あの仕事はもっとこうしたほうがいいかなとは思っていました。
そうか! そうやって考えていてくれてありがとう! 君が楽になるやり方で、お客さまももっと喜んでいただけるなら積極的に導入したほうがいいと思うんだけどどう思う?
そのとおりだと思います!
そうだよね! 仕事が軌道に乗ってきた君だからこそできることだから、もっと自分が楽になるために、そしてその結果お客さまに喜んでいただけるように、来週はできるようになったことを増やしていこう!
わかりました! ありがとうございます!
このような形で、前週よりも少なかったという事実を指摘するのではなく、できることが順調に増えている事実に着目し、一区切りとして次のステップを目指してもらうというような指導をしています。
そして、その段階まで成長できたという成果を認めて「だからこそ」という表現(限定話法)を使って、より特別感を認識してもらうことによって部下に更なる自信をもつけてもらっています。
大切なことは、前週よりも報告内容の個数が少なかったことを指摘するのではなく、それを認めたうえで次を促すことです。
ぜひこのやり方で部下に自信をつけてもらうと同時に自分で考えるクセづけをさせましょう。
2カ月間継続させる
私は1人の部下に対して2カ月を目安に書き出しをさせています。
理由は、1カ月では箇条書きの個数が少なくなるという状態にならない人もいるかもしれませんし、ずっと続けていると何より部下も上司もお互いに仕事が増えてしまうからです。
私も何度かこれをやっている中で、最初の2週間くらいでできることが増えていき、3~4週目くらいに少し落ち込むので、そこで上記のような指導をして部下にステップを登ってもらい、3~4週間効率化などの考え方を指導しながら独り立ちしてもらうという流れが多かったです。
人によって成長のスピードは違うと思いますが、1つの目安としていただければと思います。
【おまけ】自信がない部下の適性
もし、2カ月間も指導して部下を成長させている余裕がない場合、現状で適性のある仕事を割り振るのがマネージャーとしては必要なことです。
彼らに向いている仕事は「正解のある業務をこなす仕事」です。
なぜなら、彼らは基本的に真面目で、与えられた仕事をこなすことはそれなりにできるからです。
たとえば、下記のような仕事が向いているでしょう。
- データの抽出
- お客さまの要望を5W1Hに分けて報告すること
- 同僚の意見を聞き、上司に報告すること
- 資料の印刷や会議の準備
- 部署内で毎日行うルーティン業務
じっくり彼らを指導する時間がない場合は、これらの業務を任せて自信をつけさせることも可能です。
ただ、このままでは工夫や改善を行うことはないため、報告をもらった際に少しずつ工夫を促していくようにしましょう。
まとめ
自信がない部下に私が実践して効果が出た自信を持たせる指導法はいかがでしたでしょうか?
とにかく大切なことは、部下を見捨てることではなく、根気強く彼らを改善しようとすることです。
彼らが自信を持って仕事に取り組めるようになれば、マネージャーとしては彼らに仕事をどんどん振ることができるようになり、組織がより機能するようになるからです。
すべての人がもれなく機能する組織を作るために、ぜひ実践してみてください。