若くして管理職になれば、年上の部下を持つこともあります。
昇進するのはいいことなのですが、年上の人が自分の部下になったときに、ぶっちゃけ「どうやって仕事を進めていったらいいんだろう?」と困る人も多いのではないでしょうか?
日本では学生時代に年上の人に何か指示を出すことはほぼありませんので、経験がない人が多くて当然です。
私も困りましたが、対応方法を知っている今ではむしろウェルカムです。
本記事では、年上の部下を持つ、あるいは持つことになった管理職の人向けに、どうやって部下と対峙するべきかをまとめて記載します。
目次
年上の部下のマネジメント4カ条
年上の部下をマネジメントするときは、以下の4つを心がけましょう。
- 「指示」「命令」ではなく「協力要請」
- 理由を懇切丁寧に説明する
- 話しかけるときは必ず敬語
- 呼び捨てにせず、敬称をつける
年上の部下に何か依頼するときは「協力要請」が効果的
年上の部下に何か指示を出すときには、指示・命令という伝え方ではなく、「協力要請」という伝え方が一番うまく回ります。
頼られて嫌な気持ちになる人なんていませんからね。
以下の5つが、年上の部下を持ったときに私がよく使っていた言い回しです。
「○○をしてください」とか、「○○しなさい」というような命令口調で指示するのではなく、「○○をお願いできますか?」や「○○をお願いしたいです」のように伝えるのです。
このような言い回しをすると、相手のリアクションは大体「そこまで言われたらしょうがないな〜」になります。
このように、ちょこっとだけ言い回しを変えるだけで、年上の部下に対する指示が格段に通りやすくなります。
仕事の指示を出すときは、「理由」の説明をしっかり行う
年上の部下に仕事を依頼する際は、同年代の部下よりも理路整然と「その仕事をする理由」を説明する必要があります。
年上の部下は自分よりも年下の管理職に対して「意見を言う」心理的なハードルが低いので、少しでもツッコミどころがあるとこれみよがしに指摘してくるからです。
ポイントは、2つの側面で理由を伝えることです。
- その仕事を依頼した元々の理由
- 年上の部下でなければならない理由
この2つをしっかり伝えることができれば、断られることはありません。
たとえば社内の上席の人が来たときの懇親会の幹事を年上の部下に任せるとき、上記2つを踏まえた伝え方は以下のとおりです。
Aさん、今度専務がうちにいらっしゃる際の懇親会の幹事をお願いできますか?
え、なんでオレなんだよ! そんなの若い人にやらせればいいじゃないか!
そうですよね。私も最初はそう思ったんです。ただ、今回Aさんにお願いしたい理由は2つあるんです。
なんだよ、言ってみてよ。
1つ目は、今後ほかの部下に任せるために、幹事としての正解が必要だからです。1回目からちゃんとできる人はいないので、きちんと見せる必要があります。そこで、経験豊富なAさんの力を借りたいと思ったんです。
だったら自分でやればいいじゃないか。
はい、ですがここからが2つ目の理由です。Aさんは専務の好みもよくご存じなので、専務もきっと喜びます。逆に好みを知らない人が幹事をやって専務が機嫌が悪くなっている状態で2時間一緒にいるのって嫌じゃないですか?
た、たしかにな……。
ですよね。なので、今回は年下の人間に正解を見せるのと、専務を機嫌よくさせてお互い過ごしやすくするという2つの目的でAさんしかいないんです。
……そういうことなら仕方ないな。今回だけだぞ。
Aさんに相談してよかったです。よろしくお願いします!
このように、年上の部下に仕事を依頼する際は、その理由を懇切丁寧に説明することを心がけましょう。
話すときは敬語を使うのが当たり前
年上の部下と接する際は、敬語を使いましょう。
多くの人が悩む問題ですが、敬語を使うべき理由は、タメ口で話す方がリスクがあるからです。
敬語で話されて怒る人はいませんが、タメ口で話されると怒る人もいるかもしれません。
「敬語で話したほうが無難」なため、年上の部下には敬語を使いましょう。
呼び捨てにせず敬称を付けて呼ぶ
敬語を使うのと同様に、年上の部下を呼ぶ際は敬称をつけましょう。
理由は年上の部下に敬語を使うときと一緒です。
「Aさん」と呼ぶことが大切です。
タメ口や呼び捨てで話される年上の部下の心理
タメ口や呼び捨てで話されることによる年上の部下の心理状態は、以下のようなものになります。
なんだよ、こいつ上司になったからって急に偉そうに。
そりゃそうです。だれだって、昇進したから偉そうになった人のことは嫌いになるからです。
同期の人が自分より早く昇進して、偉そうに振る舞い出したら距離を置きたくなりませんか?
同期ですらそうなのに、自分より年下ならなおさらです。
偉そうに振る舞うマネージャーは、年齢に関係なく組織を回しづらくなることを肝に銘じておきましょう。
会社に「管理職」という役割を与えられただけで人として偉そうになってしまうのはひたすらダサいですね。
ケーススタディ
年上の部下に以下のようなタイミングで仕事を依頼するシチュエーションごとの言い回しを記載します。
- 取引先でのプレゼンを依頼するとき
- 顧客対応を依頼するとき
- 資料作成を依頼するとき
ひとつずつ解説していきますね。
取引先でのプレゼンを依頼するとき
私が自信を持ってオススメする、百発百中の伝え方は以下です。
Aさん!
今度の取引先でのプレゼン、Aさんにお願いしてもいいですか?
どうしても成功させたいので、一番経験のあるAさんの力を借りたいんです!
「取引先でのプレゼンはAさんがやりなさい」というフレーズと同じことを言っているのですが、受け取る側の印象が全く違うものになります。
赤字の部分が4つのマネジメントのポイントで、すべて網羅した指示の形です。
このように、何か年上の部下に依頼するときには、単純な指示・命令をするのではなく、お願いをするような形で伝えましょう。
顧客対応を依頼するとき
顧客対応はむしろ経験がものをいうので、一番頼みやすいかもしれません。
Aさん!
B社の対応なんですが、Aさんにお願いしてもいいですか?
きめ細やかな対応が必要になると思うので、一番経験のあるAさんの力を借りたいんです!
年上、年次が上であることの最大の強みは、「若手よりも経験があること」です。
顧客対応はこれまで積み上げてきた経験値がもっとも生きる場面なので、「あなたが一番優れているから頼みたい」という、誰が見ても明らかな強みを持っていることに焦点を当てるのがオススメです。
資料作成を依頼するとき
資料作成を年上の部下に依頼するときは、こんな言い回しで伝えてみてください。
Aさん!
今度の会議資料なんですが、Aさんに作成をお願いしてもいいですか?
社内で意見を通したいので、社内のことを一番知っているAさんにしかお願いできないんです!
顧客対応と同じですが、年上の部下の優れているところのひとつは「経験値があること」です。
それを踏まえた言い回しをするようにすれば、うまくいきます。
年上の部下が横柄な場合の対応法
年上の部下に丁寧に接していても横柄な態度が変わらない場合は、面談の場を設けて、以下の2つの手段を使いましょう。
- 評価を引き合いに出す
- 自分が同じ立場になったらどうするかを聞く
評価に関する面談を全員と行う
まずは、年上の部下だけではなく、組織内全員と現状の評価と今後のための面談と称して、話し合う場を設けましょう。
これは、年上の部下と面談するために1人だけを呼ぶことでの警戒感をなくすためです。
全員が順々に呼ばれていったら「あぁ、次は自分か」くらいにしか面談に対する印象を持たないですよね?
このように、個別に話し合うことへのハードルを下げます。
マネジメントに関する相談を持ちかける
その上で、年上の部下との個別面談の場で評価の話をし、マネジメントに関する相談を持ちかけます。
年上の部下の態度に対する注意ではなく、相談という形をとることで話をしやすくするためです。
「ここがダメです」と具体的に態度を注意するのではなく、「自分が上司の立場だったらどうするか」を考えてもらうことで、年上の部下が自分で気づくように仕向けます。
「私はあなたにアドバイスを求める立場」だということを醸し出しながら面談しましょう。
私の実際の面談とポイント
年上の部下との面談の際に大切なポイントを2つお伝えします。
- 年上の部下と仲良くなること
- 共同運営者のような位置付けで当事者意識を持たせること
年上の部下と仲良くなるためには、「否定せず共感する」ことが非常に大切です。年次に限らず、頭ごなしに否定や拒絶されると相手を嫌いになってしまうからです。
さらに、当事者意識を持たせることによって、「自分がなんとかしなければ」という気持ちになり、横柄な態度どころか積極的に組織運営に関わってくれるようになります。
それらを意識して私が年上の部下と実際に面談してうまくいったときの会話の流れを紹介します。
どう話したらいいかわからない! という方はぜひ参考にしてみてください。
Aさん、現状の評価はこんな感じです。
そうか、会社はほんと評価してくれないよな。
たしかにそれはあるかもしれません(共感)。いつもAさんは私に的確なアドバイス(要するにグチ)をくださるので、正直上の立場が向いていると思うんですよね。
だろ? まったく会社は何考えてるんだか。
そこで折り入ってAさんに相談がありまして……(共同運営者の打診)。私もAさんが上の立場に向いているって話を上司にしていこうと思うのですが、先にどんな風にAさんがマネジメントしていこうとしているかを実際に考えておいていただけると、それを元に話がしやすいんですよ。なので、一緒に考えていきませんか?
なるほど、たしかにな……。俺だったらこうするね。
早速ありがとうございます。Aさんのお話ってほんと勉強になります。ちなみにたとえば、Bさん(Aさんよりも年上)がAさんの下にきたらどうしていきますか?
そうだな、あの人はプライドが高いから、いい感じに転がすしかないだろうな。
とてもイメージが湧きますね! ありがとうございます。こんな風に、組織をどう回していくか常に考えていただけたら、私も上に話がしやすいですし、Aさんも仕事しやすい環境を自分で作れると思います。仮にうまくいかなくても私が責任とりますし、これからもご相談したいので引き続き組織運営にアドバイスいただけませんか(協力要請)?
わかった、考えてみる。
ありがとうございます! Aさんがいてくださってほんと助かります! 頼りにしてます!
こうやって「自分が上の立場になったらどうするか」を当事者意識を持って考えてもらうことにより、Aさんは以前のような横柄な態度は取らなくなり、昇進していきました。
もちろん私もバッチリ評価されました。笑
管理職としての心構え
最後に、年上の部下に対してだけではなく、管理職として持っておくべき心構えをご紹介します。
管理職は「組織の目標を達成すること」がゴールになります。
管理職が組織の成果に対して責任を負っているからです。
そのため、年上の部下を従順にしたいという考えは、それによって組織の成果が悪くなるなら悪手になります。
少し表現が悪いかもしれませんが、組織の目標を達成するために、年上の部下を「うまく使って」いくことが必要です。
自分が気持ちよく働くためではなく、組織の目標を達成するために年上の部下を気持ちよく働かせる方が、結果として自分が評価されます。
無理に改善しようとするのではなく、手のひらの上で転がす感覚でマネジメントをすることをオススメします。
まとめ
年上の部下のマネジメント方法で一番有効な手段は「協力要請」です。
対立して改善しようとするのではなく、一緒に組織を回していこうという共同運営者にすることによって、組織は成果を出せるようになります。
経験がある人を味方につけられれば、自分自身の得にもなりますよ。